日本人は投資が苦手だということは昔から言われてきましたが、近年は政府の強力な後押しもあって貯蓄から投資への流れが加速しています。
投資を考えるにあたってはメリットだけでなくデメリットやリスクも承知しておく必要があるので、ある程度勉強が必要です。
本章では投資全般にかかわる基礎的な知識で押さえておくべきことを網羅して見ていきますので、ぜひ参考になさってください。

■投資・金融資産・金融商品それぞれの意味

投資・金融資産・金融商品それぞれの意味

投資は直接的には資産を増やすことを目的に行われるものですが、社会的には経済を維持、発展させるものでもあります。
政府が「貯蓄から投資へ」の号令を強く指示したのは国民が保有する眠れる資産(現金や預貯金)を日本経済回復のために活用して欲しいという願いからです。
金融商品はそれぞれの資産種別を扱うマーケットで売られていて、これを購入すれば購入者の金融資産となります。
金融資産とは投資をする対象であり、株式や債券、投資信託などの他に広義では不動産や保険なども入ります。
また厳密には預貯金も金融資産の一種です。
預貯金は元本が保証されているので最も安全な金融資産とされます。

■金融商品選びにおいて重要な要素

金融商品選びにおいて重要な要素

ここでは投資対象になる金融商品選びにおいて重要な要素である「安全性」「収益性」「流動性」の3つを確認します。

①安全性
安全性は元本割れをするリスクや将来確実に投資した資金を回収できるかという視点で見る要素です。
上で預貯金は最も安全な金融資産と言いましたが、預貯金は元本割れをすることがなく、確実に一定の金利が上乗せされます。
また将来確実に現金として引き出せるので、安全性が高いというわけです。
株式などはマーケットの値動きによって元本割れを起こす可能性がありますし、不動産も買った時よりも地価が下落すれば値下がりしてしまいます。

②収益性
収益性はその投資対象からどれだけの利益が見込めるかという要素です。
預貯金は以前よりは金利が増しましたが、それでもわずかな数字ですからあまり収益性がある商品とは言えません。
収益性が比較的高いとされている株式は、上手く投資対象を選定すれば大きなリターンを得られる可能性があります。
また不動産も現物不動産の場合はうまく運用すれば大きなリターンを得られます。
不動産は現物以外にも不動産投資商品として細分化された「J-REIT」という種類もあります。
J-REITは投資信託の一種で投資した資金に対して一定の分配金を得る形で利益を享受します。
現物不動産と違って小口化されているため、収益性は現物不動産よりも劣ります。

③流動性
流動性は必要な時にすぐに現金に変えられるかという視点でみるものです。
預貯金はすぐに現金として引き出せるので流動性が高いと言えますが、株式や不動産などは現金に変えるのに一定の時間を要します。
マーケットがある上場株式などはそれでも比較的早期に現金化できますが、現物不動産は買い手を見つけるのにどうしても時間がかかりますから、流動性は低いと言えます。

■投資におけるリスクとリターンの関係

投資におけるリスクとリターンの関係

投資においてはリスクとリターンの関係について知っておくことが大切です。
リターンはおおよそのイメージを持てると思いますが、ここで言うリスクは危険という意味ではありません。
投資におけるリスクは「不確実性」を意味するもので、株式であれば株価の変動の振れ幅を指すことになります。
株式は債権よりも価格変動の振れ幅が大きいので、債権に比して株式はハイリスクであるということが言えます。
そしてリスクとリターンは常に正の相関関係を維持すると理解しておきましょう。
リスクが大きければ得られるリターンも大きくなり、リスクが小さければ得られるリターンは小さくなるというのが投資の大原則です。
ハイリスク・ハイリターン、もしくはローリスク・ローリターンのどちらかしかないということですね。

■金融商品の種類

金融商品の種類

ではここで個別の金融商品の種類について、それぞれの概要を見ていきます。

①株式
株式は企業への投資で、会社の所有権の一部を購入するものです。
株式を購入することでその企業の株主となり、企業の成長や利益に応じて配当金を受け取る権利が与えられます。
株式の価格は市場の需給や企業の業績、経済状況によって変動します。
将来的に株価が上がれば売却してキャピタルゲインを得ることができます。
逆に企業の業績悪化や市場の急激な変動によって株価が下がれば損失を被る可能性もあります。

②債券
債券は企業や政府が資金調達のために発行するもので、債券を購入することで発行体に対して一定期間後に元本と利息を受け取る権利が生じます。
債券は株式と比較してリスクが低く、安定した収益を期待できます。
ただし利息の支払いが滞った場合や発行体が破綻した場合は、元本を失うリスクもあります。
債券の種類には国債、地方債、企業債などがあります。

③投資信託
投資信託は多数の投資家から集めた資金をプロのファンドマネージャーが運用する商品です。
複数の株式や債券、その他の金融資産に分散投資することで、リスクを分散しつつ安定した収益を狙います。
投資信託は手軽に分散投資ができるため、初心者に適しています。
ただし、ファンドの運用成績によっては損失を被ることもあり、また手数料が発生する点には注意が必要です。

④不動産
現物不動産投資は物件を購入し、賃貸収入や売却益を狙う投資手法です。
現物不動産は一般に価値が安定性しているため長期投資に向いています。
賃貸収入は定期的なキャッシュフローを生み、資産の価値が上昇すれば売却益も見込めます。
ただし、不動産の管理や維持に手間がかかり、市場の変動や賃借人の問題などのリスクも伴います。
証券化した不動産投資信託(REIT)を利用することで、個別物件の購入なしに不動産投資が可能です。

⑤先物取引
先物取引は特定の商品や金融資産を将来の特定の時点であらかじめ決められた価格で売買する契約です。
先物取引はハイリスク・ハイリターンの投資商品であり、慎重な検討が求められます。
例えば原油や金などが媒体となり、実際の取引ではレバレッジを利用することが多く、少ない資金で大きな取引が可能ですが、その分リスクも大きくなります。

⑥外国為替
外国為替取引(FX)は異なる通貨を売買する取引です。
通貨の価格は常に変動しており、その変動を利用して利益を狙います。
例えば円とドルの為替レートの変動を利用し、安い時に買い、高い時に売ることで利益を得ることができます。
外国為替取引は24時間市場が開いており、流動性が高いですがリスクも伴います。

⑦仮想通貨
仮想通貨はデジタル通貨であり、近年は投資対象として定着しています。
代表的な仮想通貨にはビットコインやイーサリアムなどがあります。
仮想通貨の取引は24時間可能で流動性があり、ハイリターンが期待できるものの、ネット空間における攻撃の対象になりやすく、セキュリティ方面の心配がつきまといます。

■まとめ

本章では経営者が押さえておくべき投資の基礎知識について見てきました。
各金融商品にはそれぞれ特徴やリスク、リターンの特性があります。
投資を行う際には自分のリスク許容度や投資目標に応じ、複数の商品を適切に組み合わせることが重要です。
より良い判断を行うことができるよう、投資に関する知識の吸収に努めていきましょう。