国の経済の礎を築くのは国内で経済活動に取り組んでいる事業者の方々です。
大小様々な規模があるにせよ、そのどれもが我が国の根本を支える原動力となります。
彼らなくして日本という国は成り立たないわけですが、とりわけ新規に事業を立ち上げるスタートアップの事業者の方にはこれからの国の希望を託すことになるわけですからぜひ頑張って頂かなくてはなりません。
この回では国内のスタートアップ企業の動向について見ていきたいと思います。

スタートアップ企業とは

スタートアップ企業とは

スタートアップ企業は一般に創立間もない企業という意味で捉えられると思いますが、もう少し踏み込んでいうとこれに加えて以下のような特徴を持つ企業のことをいいます。
新しい技術やビジネスモデルを持っている
イノベーションを生み出す力がある
短期間で成長できるポテンシャルがある
上のような特徴を合わせて持つ企業体は限られますから、スタートアップはある意味希少性のある企業であると言えるでしょう。
若く柔軟な発想で様々な諸課題に主体的に取り組んでくれる存在として、スタートアップは国も大きな期待を寄せています。

スタートアップが経済に与える影響

スタートアップが経済に与える影響

実際にスタートアップ企業は日本経済に大きな影響を与えています。
経済産業省の推計では、スタートアップ企業によるGDP創出額は直接効果で10.47兆円の規模に上るとされています。
間接波及効果を含めると19.39兆円規模とされ、経済的インパクトを発揮していると評価しています。
このうち雇用創出の面で52万人、所得創出の面では3.17兆円規模の試算も出ています。

日本のスタートアップ推進政策

日本のスタートアップ推進政策

日本はスタートアップが育ちにくい環境だという指摘がなされてきたのはかなり以前からで、確かに海外と比べると総合的に見てスタートアップ企業の活動がしやすい環境とは言えません。
これは今でも変わっていませんが、それでも国はスタートアップ育成の重要性を考えていて、各種の政策を推進しているところです。
2022年には「スタートアップ創出元年」と銘打ち、五か年計画でスタートアップを生み育くくむエコシステム構築を進めています。
ここでいうスタートアップエコシステムとは、シリコンバレーなど海外に学び大企業や個人起業家、大学や政府などの関係先が相互に協力してスタートアップの輩出、育成を進める環境整備のことを言います。
発足当初の年には矢継ぎ早に施策を進め、「スタートアップ育成五か年計画」を発表すると同時に令和4年の二次補正予算で1兆円規模を計上します。
さらにスタートアップエコシステムの抜本強化に向けて令和5年度税制改正で7つの税制を改正します。
また令和6年度予算案と与党税制改正大綱で5つの税制改正を決定するなど、政府も本腰を入れてスタートアップの育成に取り組んでいます。
政府はスタートアップへの投資額を5年で10倍にする計画で、これにより人材やネットワークの構築、資金供給の強化と出口戦略の多様化などを狙っています。

ステージ別の支援内容

ステージ別の支援内容

もう少し踏み込んで政府の支援体制を見てみましょう。
スタートアップエコシステムでは新興企業や起業家の増加、規模拡大のステージに応じた効果的な支援となるように工夫しています。
シードあるいはプレシードと呼ばれる段階では人材やネットワーク構築支援としてメンターによる若手起業家の人材支援や起業家教育の拡大などの支援、また創業を支える資金的な応援体制として経営者保証を必要としない信用保証制度の創設、非課税措置の創設などの支援を行います。
アーリー・ミドルと呼ばれるステージでは資金供給の拡大を図るためジョイントベンチャーなどへの公的資本の投資を拡大したり、ストックオプションの環境整備を行います。
レイタ―と呼ばれるステージではいよいよユニコーン企業輩出を想定して大企業との連携拡大や出口戦略の多様化を図るため、オープンイノベーション促進税制、M&Aの促進、海外市場への事業展開支援などを図る体制を取っています。

世界各国との比較

スタートアップ投資に関して世界と比較した場合、決して十分な支援体制とは言えないのが実情ですから、引き続き政府にはスタートアップ支援を継続して進めてもらいたいと考えます。
例えばエンジェル税制といってスタートアップに投資した個人投資家の所得税を優遇する施策など税制面の施策が多く考えられていますが、税制だけでなく起業家目線で「新たなビジネスモデルに挑戦したい」と思える環境を総合的に作っていく姿勢が必要だと感じられます。

まとめ

この回では国内スタートアップ企業の動向について見てきました。
諸外国とくらべて出遅れている感のあるスタートアップ支援について、国も積極的に取り組んでいるところです。
様々な取り組みは評価できますが、起業家目線で一層挑戦しやすい環境づくりが求められます。
将来の日本を支える担い手として若い起業家の育成にぜひ強力に取り組んでもらいたいと思います。