現在我が国では人手不足や社会保障費の問題など社会構造的な諸問題が山積しています。
これら個別の問題の多くは元をたどると国内の少子高齢化、人口減少というところに行きつきます。
今後このままの勢いで人口減少が進むと、近い将来日本が消滅するのではないかと言われるほど、問題は深刻です。
本章では超高齢化が進む日本で私たちにできることを考えてみましょう。

人口減少は国全体を左右する問題

人口減少は国全体を左右する問題

冒頭で日本が消滅するかもというショッキングなことを述べましたが、国内の人口減少の問題はそれほど深刻だと捉えて頂きたいからです。
数十年ほど前から、すでに「高齢化社会」という言葉が使われていました。
つまり今現在高齢化に向かっていますよ、ということですが、その後しばらくすると「高齢社会」という言葉が使われ始めました。
これはつまりすでに高齢社会になっているということです。
「高齢化社会」は人口の7%以上を65歳以上の方が占めている状態を指し、「高齢社会」は人口の14%以上を65歳以上の方が占める社会のこといいます。
そして今、現状の日本はこれを超える「超高齢化社会」に突入しているとされます。
2024年現在の数値として、65歳以上の割合は29%となっていて、2050年の予測では36%が高齢者で占めるという予想も出ています。
日本の高齢化は今後も改善する要素は見られないとされ、子どもの数が今後も増えない場合は上記の予想が現実に近づくことになります。
人口ピラミッド上で高齢者の数が増え続けているのは第一次ベビーブームで子どもの数が急増したからで、その方々が今高齢者の年代になっているわけです。
彼らは戦後、あるいは高度経済成長期に日本の復興に人尽力した方々で、この年代の方が年を取れば今の高齢者が増えるのは当然のことです。
高齢者が増えているのが悪いことではなく、若い世代が増えないことに社会問題としての根幹があると言えます。

超高齢化社会で懸念される問題

超高齢化社会で懸念される問題

では超高齢化社会が進むことでどのような問題起きてくるのでしょうか。
以下で見ていきます。

①社会保障費の負担増、社会保障給付の減

我が国は国民全員が社会保障の恩恵を受けられる仕組みになっています。
そのために一定の社会保障費を支払っているわけですが、現役世代の人口が減れば国として保障費にかかる収入が減るわけですから、これまでと同じ給付を維持するのは難しくなります。
給付を減らすか、社会保障費の値上げを検討せざるを得なくなります。

②介護業界の維持が困難になる

年をとっても人間らしい生活を維持するには介護人材の力が不可欠です。
高齢者が増えれば介護の需要は確実に増していきますし、寿命が延びている現状では死亡するまでの長い間に、相当難度の高い技術を要する介護が必要になります。
国の施策もあって介護人材の人数自体は増えているようですが、まだまだ労働負荷に見合った賃金ではないとされていますし、何より労働の内容がかなり負担の大きいものですから、続かずに辞めてしまう人も多いようです。
つい最近、ある介護事業者が資金難で経営を継続できず、利用者が大きな不利益を受けたというニュースもありましたが、事業者の参入も増えている一方で倒産件数も伸びているため、今後は事業者の質の確保が課題とななります。

③貧困

長生きは喜ばしいこととされたのはかなり以前の話で、今は「長生きリスク」と言われるようになっています。
高齢になるほど体は動かなくなり、必要な医療費や介護費なども増えます。
しかし収入は増える期待が無いので、長生きするほど生活が苦しくなるという予想が成り立ちます。
「人生100年時代」という言葉が知られるようになっていますが、FPなどお金の問題を扱う業界では老後の生活資金の相談が増えています。
若い世代でも適切な資産形成が難しい例が増えていますが、若いうちから老後に向けた適切な資産形成ができるように支援が必要かもしれません。

私たちにできることは?

私たちにできることは?

日本の高齢化問題に対して、国も色々と施策を講じています。
介護方面では公的介護保険の整備や地域包括支援センターの設置が進み、社会保障費や税制の見直しも随時行われています。
自治体も都市計画を見直して社会インフラを維持できるようコンパクトシティー化を進めなるなどして社会経済の維持に努めているところです。
私たちにできることとして、企業単位では人口減少や高齢化に対応できるようにするため、各種テック技術の開発が進んでいます。
こうした技術を各家庭や介護事業所で導入することで介護の負担を軽減できます。
家庭単位では上述の地域包括支援センターに相談することで、高齢者施設のあっせんを受けられたり、各種介護機器のレンタルや購入、またこれにかかる補助金などについても相談できます。
個人単位ではさらに自分自身や家族の高齢化への備えを進める意識が必要です。
老後資金を十分形成できるよう、現役時代から資産形成を考えておかなければなりません。
老後に貧困に陥らないためのライフプランの作成などはファイナンシャルプランナーに相談できます。
今現在高齢の親がいて心配だという場合は民間の保険なども検討できます。
自分、あるいは自分の家庭ではどのような備えが必要なのか、一度じっくり考えてみましょう。

個人単位、家族単位で意識すべきことは?

個人単位、家族単位で意識すべきことは?

では具体的にどのようなことについて私たちは意識して準備すべきなのでしょうか。
ここでは主に個人や家族の生活を守るということを意識して、ザックリとですが概観をお伝えしたいと思います。

①社会保障制度を知る

我が国は世界でもまれにみる社会保障が充実した国ですが、実際には制度の仕組みや使い方をよく知らないでいると十分に恩恵を受けることができません。
高齢期の社会保障、社会保険としては公的介護保険制度について勉強しておくべきです。
自分や配偶者、親などの高齢化に対して介護保険制度を十分に使いこなさないと、保険料を払うだけで十分な恩恵を受けられません。

②民間保険を活用する

公的社会保障、公的社会保険を補完するのが民間の保険で、高齢期においては老後資金の確保を目的にした保険や認知症保険などが数多く登場しています。
これらの中から自分や家族に必要な保険をピックアップして検討します。

③相続や税金について知る

高齢期でも公的年金からは一定の税金が引かれるので、手取りの金額を正確に知ったうえで生活費の見積もりを行う必要があります。
また上で見た民間の保険も一部の保険は税金を取られるので、可処分所得として幾ら手元に残るのかといった計算が必要です。
また避けて通れないのが相続です。
人はいずれ死亡して相続が起きますから、遺産争いを防ぐために何を準備しておくべきなのか、個々のケースに応じて考え相続対策を行います。
相続問題は民事上の対策だけでなく相続税や贈与税など税務上の対策も必要なため簡単にはいきません。
特に事業をされている方の相続対策については相当難度が高くなるので、数年程度の十分な時間をかけて対策を講じる必要があります。
また高齢者が不動産を所有している場合、相続の際にトラブルの原因になるので、税制の特例を利用しつつ生前に現金化を図ることも有効です。

④金融資産の扱いを検討する

金融資産を運用、保有している場合、高齢になるにつれて少しずつ現金化して流動化させるのが安全とされています。
高齢になって認知機能が落ちると金融資産の運用が上手にできなくなる可能性がある他、いざという時に流動的に現金化できず資産として活用できなくなる恐れがあるからです。
現金化する時期や量は個々のケースで調整が必要ですが、自分の親がかなり高齢になっている場合は少しずつ金融資産の現金化を促すことを考えてみてください。

まとめ

本章では超高齢化が進む現状を見ながら、これから起き得る問題や課題、私たちにできることなどについて見てきました。
現在日本は高齢社会をすでに通り過ぎ、超高齢化社会に突入しています。
人口に占める高齢者の割合は今後も増加する見通しで、少子化が止まらない場合は高齢化を止めることはできません。
大きな施策は国に任せるとしても、私たち個々人でできることを考え、自分や家族の生活維持について話し合う良い機会です。
高齢の世代を抱えるご家庭では今後のライフプランや家計の見直しなどをしてみましょう。
若い世代の方も、自身が高齢になった時に困らないよう、資産形成に関して情報収集に努めてください。