少子高齢化がさらに進むわが国においては産業・雇用分野の人手不足が深刻化しています。
全般的に売り手市場となる中で、人材の定着が思うようにいかないことに頭を悩ませる経営者の方は多いと思います。
会社と従業員との関係構築が課題となる今日、従業員エンゲージメントの重要性が言われるようになっています。
本章では経営者が知るべき従業員エンゲージメントの高め方について見ていきます。
従業員エンゲージメントとは?
本来、エンゲージメントとは「婚約」などの意味を持つもので、ブライダル方面のワードとして認識する人もいると思います。
従業員エンゲージメントは従業員側が持つ会社への愛着という意味で使われ、言い換えれば社員に会社を好きになってもらうということです。
例えば単純に高い報酬を支払って労働意欲を上げるというようなものではなく、社員が会社に愛着を持ち、自発的に労働意欲を発揮してもらうというような考え方です。
ある調査では日本の従業員エンゲージメントは海外と比べて低いとされ、人材確保が難しくなっている近年の国内事情の元でこの重要性が認識されるようになってきました。
従業員エンゲージメントが低い理由は?
日本の企業で従業員エンゲージメントが低い理由はいくつか考えられますが、以下に代表的なものを挙げて見ます。
①社内の人間関係や組織管理に起因する理由
多くの会社は多重構造の管理職を据えて部下を管理する組織体制を取りますから、厳しい上下関係の元で労働をすることになります。
フラットでないため堅苦しさを強く感じ、「管理されている」という実感を持つことが多いと思われます。
愛着を持つという観点からはかなりかけ離れているといって良いでしょう。
②自身の成長を実感しにくい
会社の歯車となって労働する実感を持つ働き手が多いとされ、自分の成長を実感しにくく、そうした環境からは会社に対する愛着は生まれてきません。
③評価体制の不備
誰もが完全に納得できる完璧な人事評価法は存在しませんが、自身が持っている会社への貢献度合いの認識と会社の評価がズレることが多く、その不満がエンゲージメントを妨げる要因となります。
④給与面の不足感
エンゲージメントは金銭的な利益だけで得られるものではありません。
それでも生活するための給料が低いと感じれば愛着は持たれにくくなります。
従業員エンゲージメントを高める方法
では従業員エンゲージメントを高めるにはどのような方法があるか見ていきます。
①キャリアパスを意識する
自分の成長を実感できると社員の労働意欲も高まります。
キャリアパスを意識した社員教育の体制を整えることで、社員自身に成長の実感を持ってもらうことができるでしょう。
キャリアパスを意識するとは、社員がその会社の中でどのように成長し、将来的にどのような役職や職務を担うことになるのか、あらかじめ道筋を付けて共有することです。
自分が社内で進むべき道筋が明確になることで自身を成長させる意欲につながります。
②裁量を与える
ある程度の経験を積んだ社員にはできるだけ裁量を与えられるように配慮します。
自由度が高まることで、仕事を「やらされている感」が薄まり、能動的に職務を担う意識が身に付きます。
自分の働きの成果が会社の成長につながっている実感が持てると会社と社員の関係がより親密になります。
③労働負荷を減らす
労働時間が長い、仕事の絶対量が多くいつも疲弊しているような状態では会社への愛着は生まれません。
労働負荷をコントロールしてワークライフバランスが整う環境を整備しましょう。
④人間関係の風通しを良くする
パワハラやセクハラなどが起きる職場は絶対NGです。
法的責任の問題は別にあるとして、エンゲージメント構築の面でも最悪の要素ですから、組織の風通しを良くしてハラスメントが起きない組織作りが必要です。
⑤社員同士の仲間意識を高める
同じ会社で働く社員は皆が仲間であり、仲間同士が協力し合うことで組織に対する愛着が高まります。
また生産効率も飛躍的に上がりますから、グループ内や部署間で協力しあえる環境を整えましょう。
仲間が困っている時には積極的に助け合い、その行為を上司が認めて適切に評価することで仲間意識が深まり、会社への愛着につながります。
まとめ
この回では経営者が知るべき従業員エンゲージメントについて見てきました。
人口減少が進むこれからの時代、人を大事にする会社が選ばれるようになっていくのは間違いありません。
エンゲージメントが高まれば不満を感じる社員の退職や転職を避けられますから、安定した会社の運営が可能になります。
経営者の方はぜひ「どうしたらウチの会社をもっと好きになってくれるかな?」という視点で社員とのエンゲージメントを図ってみてください。