資金繰りの問題は業種を問わず全ての企業に降りかかります。
資金調達の手段はかなり多様化していて様々な手段を検討できる世の中になっていますが、一部の手段は業種によって制限が出ることもあります。
例えば信用保証協会や日本政策金融公庫など公的な機関が絡む場合、一部の業種では利用できません。
本章では業種を問わず利用可能な資金調達法を網羅的に取り上げて見ていきますので、ぜひ参考になさってください。

■民間銀行のプロパー融資

民間銀行のプロパー融資

信用保証協会が関与する制度融資は農林漁業や金融・保険業など一部の業種が対象外になります。
民間の銀行単独で行うプロパー融資は基本的に業種に縛りは無いので、信用があれば業種不問で融資を受けられます。

■ノンバンク

ノンバンク

ノンバンクは銀行と違って預金業務を行わない金融機関で、主に貸付事業のみで生計を立てる金融機関です。
ノンバンクも業種に関わらず融資を受けられ、銀行よりは機動的な対応が期待できます。
業者によっては多種類の融資プランを提供する所もあり、不動産以外に自動車や工場機械などを担保にできるプラン、売掛債権などの債権を担保にするプランを提供するところもあります。
担保に供せるものがなくても代表者保証があれば小口の資金の借り入れが可能ですので、困った時に利用しているという経営者もいるかもしれません。
ただノンバンクは金利が高いので利息負担がきつくなることは注意しなければなりません。

■ファクタリング

ファクタリング

弊社が提供するファクタリングも業種に関係なく利用できます。
ファクタリングは売掛債権の譲渡取引ですので、掛け取引を行っていて売掛金を保有していればどなたでも利用できます。
融資の場合は赤字があるとかなりの確率で断られますし、もし税金や社会保険料の滞納などがあるとまず間違いなく取引を断られます。
赤字や税金の滞納があるような会社がまともに返済できるとは考えられないからです。
その点、ファクタリングは債権を売却する取り引きですから、会社の信用や経営状況などは問題になりません。
売掛債権さえあれば確実に資金調達できるのでお勧めです。
銀行などの融資と違って保証人や担保の用意も要りません。
ファクタリングは売掛債権自体に価値を見出すものですから、その債権がすでに担保の代わりの性質を持っています。
また返済という概念がないので、返済リスクに備える必要もありませんから保証人や担保というものは必要ないのです。
迅速性も抜群で早ければ当日中、遅くとも数日以内には資金化できますから急ぎのケースにも対応します。
資金需要が生じた際にはぜひお気軽にご相談頂ければ幸いです。

■法人カードによるキャッシング

法人カードによるキャッシング

法人カードを保持していれば、カードを使ってキャッシングによる借り入れができます。
カードによるキャッシングでは多額の資金を調達することは難しいので、大掛かりな設備投資や事業転換の資金などを十分に賄うことはできませんが、代わりに機動的な資金調達ができるメリットがあります。
一度カードを保有してしまえば限度額までは無条件で借り入れできますし、保証人や担保を都度提供するような手間も要りません。
限度額までは繰り返し資金を引き出せるので、可能であれば一枚持っておくと便利です。

■社債発行

社債発行

会社に信用があれば社債を発行して資金を集めることができます。
社債は特定の金融機関などから借り入れるのではなく、広く一般の投資家から小口の資金を集める方法です。
投資家が提供する資金は貸付金ですので、時期が来たら利息を付けて返済が必要になります。
社債発行の際には償還時期を設定することになるので、この時期までに利息を乗せた返済資金を用意しておく必要があります。
償還時期までに十分な儲けを確保できるようであれば、下の株式発行よりは機動的な資金調達手段となります。
社債の場合は株主が増えることはないので、経営に口を出される心配は要りません。

■株式発行

株式発行

株式会社であれば株式を発行して投資家に買ってもらい、事業資金とすることができます。
株式発行によって得られた資金は返済不要で、会社の資本となるものです。
そのため安定した事業資金として活用できるメリットがあります。
その代わりに株式を購入した投資家は会社の株主となるので、経営に一定の口出しができるようになります。
経営者にとっては自由な経営ができなくなる可能性があるので、この点に留意が必要です。
経営に口を出されたくない場合は議決権制限株式とすることもできます。
この種類の株式は株主総会の議決権が制限されるので、会社運営に悪影響が出ることを避けられます。
その代わり配当金を増やしてメリットを与えなければなりません。

■ベンチャーキャピタルの活用

ベンチャーキャピタルの活用

ベンチャーキャピタルは将来有望な若い企業に資金やノウハウ、人材などを提供してくれる投資機関です。
ベンチャーキャピタルの狙いは、若い企業を育てて企業価値を上げ、上場を図るタイミングで株を売って利益を得ることです。
支援を受ける側は潤沢な資金と人材やノウハウなどの財産を得られるので、短期間に会社を急成長させることができます。
スタートアップ企業とベンチャーキャピタルはとても相性が良いのでよく利用されます。
また両者がタッグを組むことで大きな経済効果を生むことが分かっているため、国も制度的に後押しできないか検証を試みているところです。
この方面については今後も色々と期待が持たれます。

■エンジェル投資家の支援

エンジェル投資家の支援

エンジェル投資家はベンチャーキャピタルの個人版です。
個人ですから資金力では劣りますが、自分が興味のあることは率先して支援の手を上げてくれます。
あくまでイメージですがホリエ〇ンさんのような方を想像すれば分かりやすいと思います。
彼は宇宙ビジネスに興味があるのでロケットも飛ばしていますね。
個人ですから意思決定も機動的に行えるところがベンチャーキャピタルと比べた強みです。

■クラウドファンディング

クラウドファンディング

クラウドファンディングは近年大きな注目を集めている分野です。
いわゆる投資家として活動する層だけでなく、一般の個人消費者も対象にして広く資金提供を募ることができます。
クラウドファンディングで集めた資金は基本的に返済不要で、そのまま事業資金として活用できます。
資金提供をしてくれた人には、その資金で開発した製品やサービスなどを還元して満足を得てもらいます。
具体的な例を挙げると、廃れてしまった地元の酒蔵を復活させるために酵母開発や酒造りの資材購入資金などを募り、その資金で作り上げた新酒を資金提供者に還元するなどのケースがあります。
資金提供者としては新酒を買うという行動と変わりませんので、そのお酒に魅力を感じるならば資金を提供しようと思えるわけです。
支援を受ける側は作り出した製品を買ってくれる人が確実にいる状態で製造に乗り出せるので、「ニーズがなくて誰も買ってくれなかった」という事態を避けられます。
製造側と購入側の意思が最初から合致したうえで生産に乗り出せるのがクラウドファンディングの大きな利点と言えるでしょう。

■M&A

M&A

M&Aは事業譲渡の事です。
会社の事業を丸々他社に譲渡して、その対価を得ることで資金調達とすることができます。
会社自体を売って経営者が引退を考える際に検討されることもありますが、複数の事業を抱えている場合は一部を譲渡して資金化することもできます。
M&Aは買い手がいないと成立しないので、基本的には魅力的な黒字を出している事業が譲渡しやすいのですが、仮に赤字の事業でも譲渡を諦める必要はありません。
自社に充分なノウハウが無く残念ながら赤字を出している事業でも、その種の事業を本業で行っている他社であれば、その事業を買い取った後で黒字に転換させられるかもしれません。
その事業で抱えている顧客層など買い手から見て魅力があるように映ればM&Aを成功させられる可能性は十分あります。

■在庫処分

在庫処分

抱えている在庫があれば一層処分して現金化を考えましょう。
在庫は保管費用がかかるだけで荷物になりますから、処分セールなどで売ってしまうのが得策です。
帳簿価格よりも低い価格で売却した場合は売却損が発生しますので、会計上で損失計上が可能です。
ただし税務署がよくチェックする項目ですから、証拠となる資料を用意しておきましょう。

■不動産の売却

不動産の売却

もし不動産資産を保有しているようであれば売却して資金化できます。
不動産はかなりまとまった資金源になるので、日常の運転資金は勿論ですが大型の設備投資などにも運用できます。
ただし不動産は換価が難しい固定資産です。
買い手が見つかるまでに数か月程度かかるので、急ぎの資金調達が必要なケースでは動かしづらい資産です。
ただし一般の購入層ではなく不動産業者に直接買い取ってもらうこともでき、この場合は条件交渉さえまとまれば数日から数週間で現金化できることもあります。
直接買取は迅速に現金化が望める反面、買取代金の面では2割~3割ほど安くなってしまいます。
買取業者は不動産を買い取った後、必要なリフォームやリノベーションを行って貸し出したり、転売するなどして利益を創出することになります。
その費用を考慮すると、仕入れにかかる買取代金がその分安くなってしまうのです。
高額換価を狙うか、迅速性を取るかで売り方を考えましょう。

■動産の売却

動産の売却

不動産が無い場合、自動車や工場機械などの動産を売却して資金化することもできます。
不動産よりは換価金額は小さくなってしまうので、必要な資金を満たせるかどうか値踏みが必要です。
また自動車は流通が良いのですぐに換価できますが、機械類などは換価に時間がかかります。

■リースバック

リースバック

不動産や動産があっても、それが事業活動に必要な場合は売ってしまうと事業を続けられなくなります。
その場合はリースバックを検討しましょう。
リースバックは買い手に対象資産を売却し所有権を譲ったうえで、以後は買い手に賃料を払って使用を続けるスタイルです。
例えば会社が所有するビルの所有権を売った後は買い手がビルのオーナーとなるので、テナント代を買い手に支払えばそのまま使用を続けることができます。
リースバックは将来の買戻しを約束することもできるので、名義を再び買い戻したい場合は契約上で手配することもできます。

■法人保険の契約者貸付

法人保険の契約者貸付

法人が入っている生命保険があれば契約者貸付を受けられることがあります。
契約者貸付は解約返戻金の範囲内で一定の貸付けを受けられるサービスです。
貸付ですので約定期日には利息を付けて返済しなければなりませんが、金融機関からの一般的な貸付よりは利率が低めなので有利な資金調達ができます。

■法人保険の解約

法人保険の解約

複数の保険に重ねて入っていると、カバーされる保証が重複してしまっていることもあります。
この保証は要らないかなと思ったら解約を検討しましょう。
まとまった解約返戻金が入ればそれを事業資金にできます。

■代表者からの借り入れ

代表者からの借り入れ

他に資金化できるものがない、借り入れもできないといった場合、代表者が個人として会社に貸し付けをすることもできます。
代表者の意思による貸付ですので、利息を低くしたり利息を取らないといったことも自由にできます。
会社にとっては一応借金ですから、会計上は貸借対照表の負債の部に入ります。
ただ貸し付けた本人が求めなければ返済が実質的に免除される形になりますから、実際の扱いは資本的な性質となる事も多いです。
会社に余裕ができるまでは返済を免除するということが自由にできるので、融通の利く事業資金として活用できます。
もちろん、余裕ができて返済する時には利息を取ることもできますから、代表者個人としても利益を得ることができます。
ただし利息利益は代表者個人の所得税の対象になるので覚えておきましょう。

■まとめ

本章では業種を問わず利用可能な資金調達法について見てきました。
企業の資金調達法は非常に多様で、公的機関が絡まなければ制度上で業種が制限されることはほとんどありません。
経営者としては多様な資金調達手段があるのだということをまず知っておき、ケースや場面に応じて適切な手段を検討できるようにしておきたいものです。
手軽さや迅速性、担保や保証人の要不要などの利用勝手を考慮して、場面に応じた資金調達手段を考えてみてください。