直近ではアメリカトランプ政権の流動的な動きが世界的に様々な影響を及ぼしていて、このニュースにかき消されてしまっている面もありますが、国内では日銀の利上げが着実に進んでいます。
固定金利の値上げも決まり、各地の地銀でも定期預金の金利が見直されたというニュースが届いているはずです。
金利上昇は生活者視点でも大きな影響を受けますし、企業としても生産コスト、流通などの面で大きく影響します。
本章では金利変動がビジネス戦略にどのように影響するか見ていきます。

金利上昇による企業への影響

金利上昇による企業への影響

企業運営における金利変動の直接的な作用としてはまず資金調達コストへの影響が懸念されます。
企業への貸出金利が高まれば資金調達コストが増しますから、企業は設備投資をできるだけ抑制しようとします。
その分業績は低迷し下降気味になります。
間接的には資材の調達コストや輸入コストなどが増加します。
取引先でも資金調達のコストが上がっているので、そこから資材を仕入れる際のコストに転嫁されて資材調達コストが増加します。
エネルギー価格や人件費なども上昇している昨今ですから、これに調達コストの増加が相まって全体的にコスト増という構図になります。
結果として企業のコスト低減意識が働き業績が下降のベクトルをたどるというのが基本的な見方です。
そのため投資家からみて企業への投資を控える機運となり、株価が低迷する要素となります。

売り上げ増への転換が求められる

売り上げ増への転換が求められる

利益を増加させるためにもできるだけのコスト削減は行うべきですが、一企業の力ではコスト減にも限界があります。
エネルギー価格高騰は海外の紛争など国内の一企業ではどうしようもない要因が元になっていますし、人件費の上昇も少子化や需給調整のバランスが影響するものですから一企業の力ではどうにもできません。
コスト削減には限界があるので、これからは思い切って売り上げ増加に舵を切るという路線を模索する企業が増えると予想します。
コスト意識を持ちながらも、付加価値を付けて売り上げの増加を狙うというのがこれからの企業路線を基本戦略になるでしょう。
売り上げを上げるには数量を増やすか単価を上げるかの二系統がありますが、数量路線は消費者の消費意欲に左右される面が大きいので、単価の調整が必要になるでしょう。
消費者に許容される範囲で生産コストを価格に転嫁して売り上げ増を目指すというのが基本路線になるのではないかと予想します。

金利上昇局面でのコスト管理法

金利上昇局面でのコスト管理法

とはいえ価格転嫁は最小限に抑えないと顧客離れを引き起こします。
同時に適切なコスト削減も並行しなければなりません。
金利上昇局面において企業のコスト増加を抑制するには以下の3つを考慮することになります。

①借り入れの抑制

資金調達や資金管理の面においてできるだけ借り入れに頼らない体制を作ることが望まれます。
特に短期金利は変動リスクが大きいので、できるだけ短期の借り入れを避けることが望まれます。

②早期返済

これから金利が上がる局面では早期に返済を進め、金利上昇の影響をできるだけ避けることが望まれます。

③固定金利への切り替え

変動金利での借り入れをしている場合は固定金利への切り替えを検討します。
変動金利はマイナス金時代は有利でしたが、金利上昇局面ではリスクでしかないので、早期に切り替えを検討しましょう。

株主を意識した事業戦略

金利上昇局面での経営は、より一層投資家を意識することになります。
一般に金利が上がると企業は資金調達のコストが上がり設備投資などへの資金投下が難しくなります。
そのため業績は良くて平行、一般的には下降気味になる事が多いので、投資家目線では魅力が落ちます。
もちろん経営者の努力によって魅力を保ち続けることができる企業もあるでしょうけれど、一般的にはそのようなことが難しくなる局面となるので、より一層の努力が求められる時期に差し掛かっていると思ってください。

売掛金の早期回収を目指す

売掛金の早期回収を目指す

コスト削減や不良在庫を抱えないなどの努力は並行して行うとして、ぜひ意識したいのが売掛金の早期回収です。
金利上昇で会社の資金繰りが悪化しやすい状況が生まれますから、これまで以上に支払いサイトの管理には注意を払う必要が生じます。
小規模の会社でも取引先が多方面にのぼることが普通にあり、入金方面の取引先の管理と支払い方面の管理をうまく調整できないと支払い面で資金枯渇が起き資金ショートのリスクが生じます。
金利上昇で業績が落ち込むと現金不足のリスクが高まりますから、手元資金の不足にはこれまで以上に注意を払わなければなりません。
可能であれば取引先との契約を見直し売掛金の回収時期を早めることも検討します。
ただ取引先もそれぞれ事情を抱えていますし、そう簡単に見直しが叶うことはないかもしれません。
その場合は売掛金の早期現金化も検討します。
ファクタリングというサービスを利用することで売掛金の早期現金化が可能になるので、売掛金の運用管理法として多くの経営者が利用しています。
売掛金は正式には売掛債権という形で会社が保有する資産で、資産ではありますが支払いを受けられるまでは事業資金として活用できない性質です。
掛け取引を主とする事業者の悩みの種となる売掛金も、ファクタリングによって早期に現金化することができ、事業資金として活用できるようになります。
ファクタリングは融資などの貸金取引とは全く異なり、返済の必要がないので自力での資金調達が可能です。
在庫を売却して現金化する行為と似ていて、利用に際して保証人や担保を求められることもありません。
売掛金管理の手段として、また借り入れのようなデメリットの無い資金調達手段としてファクタリングを活用してください。

リスクカバーのための投資戦略

リスクカバーのための投資戦略

経営者個人としてだけでなく、企業としても投資を行っています。
金利上昇局面では債券は下落傾向に向きますので、割安の債券を購入して利益を得ることもできます。
債券運用における投資判断では利回りや理論価格から有利な銘柄を選択します。
その債権の種類によって計算方法が異なりますが、例えば利付債券を既発債として購入し、償還日まで保有する場合の利回り(最終利回り)は以下のように計算できます。

最終利回り=(表面利率+(額面100円-販売価格)/残存期間)/販売価格×100

一般に債券価格が下落気味となっている時期に利回りは上昇するので、利益を生みやすい状況となります。
コスト増をカバーする一手段として投資を行う際の参考にしてください。

まとめ

この回では金利変動とビジネス戦略との関係について見てきました。
金利動向はここ数年で国民の注目度が高いテーマとなっていて、個人としても事業者としても影響が大きいのでしばらくは注目される話題です。
事業者としてはコスト増の要因となるので、事業運営上の影響をできるだけ抑えられるように工夫が求められます。
コスト管理の意識を持つと同時に売掛金の管理に気を使い、安定した資金繰りに努めてください。