企業活動を行っていくにあたり、会社は様々なリスクに遭遇することになります。
その中には法的なリスクも存在するので、法律面での外部サポートがあると安心です。
対策として顧問弁護士を迎えることもでき、実際に多くの企業が採用しています。
本章では会社が顧問弁護士を利用するメリット・デメリットについて詳しく解説していきますので、ぜひ参考になさってください。
■顧問弁護士を利用するメリット
まずはメリット面から見ていきます。
①一から弁護士を探す手間や時間を取られない
顧問弁護士がいない場合、トラブルが起きた時や相談事が発生した際、一から弁護士探しを始めなければなりません。
最近はWEB検索などで以前よりも弁護士を探しやすい時代になっていますが、発生している問題に精通している弁護士で、なおかつ相性が良い相手を一から探すとなるとそれなりに手間と時間がかかります。
すでに契約している顧問弁護士がいれば、一から弁護士探しをする手間はかかりません。
②予約せずにすぐ相談できる
外部の弁護士を都度利用する場合、通常は相談前に予約をしなければなりません。
法人形態で運営する弁護士事務所やスタッフを複数抱える事務所では、通常本職の弁護士以外のスタッフが取次いで弁護士本人のスケジュールを見ながら数日先に予約を入れられることになります。
個人のみで運営する事務所は弁護士本人が対応することになりますが、やはり相談日程を確保するだけでも数日かかるケースが多いでしょう。
顧問弁護士は基本的に予約不要ですぐに相談を受け付けてくれますし、他の一見の相談者よりも優先して対応してくれます。
③トラブルになる前に未然に防げる
個人間においてもそうですが、企業法務においてもトラブルは未然に防ぐのがベストです。
もしかしたらトラブルが起きるかもしれないと予見した段階で速やかに顧問弁護士に相談することで、トラブルに発展しないように事前に芽を摘み取ることができます。
この場合、想定するトラブルはまだ実際には発生していないものですので、ケーススタディを検討しつつ細かい質問をすることになります。
こうした質問を都度外部の弁護士に相談するのはかなり非効率ですが、顧問弁護士ならば気になった時点で気軽に相談できます。
④トラブルになっても早期解決が望める
仮にトラブルになってしまっても、問題が小さいうちに対応することで早期解決につなげることができます。
顧問弁護士は顧問先の会社の事情をよく知っていますから、相談を受けた段階でどのように対応すべきかすぐに検討体制に入ることができます。
外部弁護士の場合、まず相談先を見つけるのに時間がかかる上に、弁護士側で会社の事情を把握し現状を見定める時間が必要となるので、すぐに解決策を見出すことが難しいことがあります。
⑤改正情報などに随時対応できる
経営者は会社の経営に集中していますから、法律やルールの改正に追い付いていくのは難しいと思われます。
法改正の場合、法律そのものの条文が変わったという事象を押さえるだけでは足りません。
その結果、自社の運営にどのような影響が出るのかを考える必要がありますし、影響が出そうな場合はその対応を考えなくてはなりません。
改正情報を掴む作業だけでなく、その先の対応策の構築も必要で、こうした本業以外に手間がかかる作業を顧問弁護士がサポートしてくれます。
⑥社内のリスク管理に対応できる
顧問弁護士は企業法務について幅広く対応してくれますから、取引先との対外的な問題だけでなく、社内の様々な問題にも対応してもらえます。
例えばセクハラやパワハラなどのハラスメント対策についても相談でき、具体的な予防策の立案にも関与してもらえます。
⑦法務部門を外注化できる
それなりの規模になれば社内に法務部門を持つこともできます。
法務部門があればある程度の問題には専門の社員が対応できるので、日常の問題には外部弁護士を使わずとも対処できるかもしれません。
しかし一つの部門を所有して運用するにはどうしても人件費などで費用がかかり増しになります。
最近は総務や人事労務部門の外注化が進んでいますが、法務部門の外注先として顧問弁護士を活用するのは効率的といえます。
もちろん法務部門を持つ余裕がない小規模事業者であってもこの恩恵は受けられます。
⑧対外的な信頼性を高められる
公式のWEBサイトに顧問弁護士の名前が載ることで、対外的な信用を得ることにつながります。
新規取引先の開拓などの際にも相手に安心感を持たせることができるでしょう。
⑨交渉や折衝で相手に押されにくくなる
トラブル対応やなんらかの交渉、折衝の際、相手方から一定の圧力を受けることもあるでしょう。
その場で妥協を強く求められたとしても、「持ち帰ってウチの顧問弁護士に相談します」と切り返せば相手もそれ以上強く出れません。
また「弁護士が付いている」と分からせることで、無理難題は押し通せないことを相手に知らしめることができます。
⑩相対的に費用を安く抑えられる
顧問弁士を利用すると一定の費用がかかりますが、それでも相対的には安く抑えられることが多いでしょう。
年に一回しか相談しないというのなら別ですが、頻繁に利用するからこそ顧問弁護士の利点があるわけで、その場合は相対的に費用が安く済むはずです。
外部弁護士に都度相談するとなるとその度に相談料や依頼料がかかるので大変です。
顧問弁護士を採用すれば割引制度を受けられることもあるので、費用面では安く済むことが多いでしょう。
■顧問弁護士を利用するデメリット
顧問弁護士には以下のようなデメリットもあるので押さえておきましょう。
①顧問料の支払いが必要
当然ですが顧問弁護士を採用するには顧問料の支払いが必要です。
料金形態は個別の弁護士事務所で異なるので確認が必要ですが、月額制の場合は5万円前後が相場となります。
顧問料で対応してもらえる範囲についても事務所ごとに違うので確認を要しますが、法律相談一般の他、契約書のリーガルチェック、内容証明郵便の作成程度であれば対応してもらえるでしょう。
それ以上の高度なトラブル対応などは別途料金がかかります。
②全ての問題に対応できるわけではない
弁護士といえども全ての法律問題に対応できるわけではありません。
専門分野や得意分野であれば当然対応してもらえますが、専門外で知識やノウハウがあまりない分野の相談には応じてもらえないことがあります。
一般商社の顧問弁護士であれば、普段の業務に際しては必要な助言ができていたとしても、イレギュラーな事態が生じて知識が薄い分野の問題が生じた場合、そちらの専門知識がある弁護士でないと対応が難しいことがあります。
ただし顧問弁護士で対応が難しい場合でも、適任の弁護士を顧問弁護士が伝手で探してくれるでしょうから、相談者が一から別の弁護士を探す手間やリスクは避けられます。
■まとめ
本章では会社が顧問弁護士を利用するメリット・デメリットについて見てきました。
一定の費用はかかるものの、顧問弁護士が付いていれば企業活動を行う上での安心感はかなり高まります。
法律相談や法律的な手続き代行をよく利用する場合は、費用についても外部の弁護士を都度利用するよりは相対的に安く済むことが多いと思われます。
リーガルリスクが高い企業や気軽に相談できる相手が欲しいという経営者にとって心強い味方になってくれますから、余裕があれば検討してみては如何でしょうか?