身近なお金が私たちの日常生活を送るのに必要不可欠であるのと同じように、企業活動における事業資金の確保も必要不可欠な要素です。
企業経営においては様々な目的で経営計画が立案、策定されますが、その中で財務に関しては計画を推進する原動力となるものですから重要視されます。
本章では経営計画策定における財務の役割について見ていきたいと思います。
経営計画とは
最初に経営計画とは何かについて簡単に押さえておきます。
経営計画は企業が中長期的な目標を設定し、これを達成するための戦略や行動計画を具体化したものです。
企業のビジョンやミッション、目標、戦略、行動計画、リスク管理などがまとめられ、視覚的に企業全体の方向性を明確にすることができます。
経営計画を策定することで効率的な経営につなげることができます。
経営計画における財務の役割
経営計画における財務の役割は目標実現の各種の行動を起こすための財源に関することですので非常に重要です。
企業の資金調達、資金運用、投資計画、コスト管理などに関して、経営計画の実現に向けた具体的な財務戦略部門としてのセクションになります。
財務の主な役割を詳しく見てみましょう。
①資金調達
企業活動においては適切な資金調達が必要です。
財務部門は銀行融資や社債発行、株式発行などの資金調達方法を検討し、最適な手段を選定します。
また資金調達に伴うコストやリスクを分析し、調達条件を交渉する任務も担います。
②資金運用
調達した資金をどのように運用するかも財務の重要な役割です。
資金の運用には大きく短期運用と長期運用があり、短期運用では運転資金や一時的な資金余剰を効率的に運用する方法などが検討されます。
長期運用では設備投資や新規事業の立ち上げなど、将来的な成長に向けた資金の使い道を計画します。
③投資計画
投資計画は、企業がどのように資金を投入し、リターンを得るかを計画するものです。
財務部門は投資案件の評価やリスク分析を行い、投資の妥当性を判断することになります。
④コスト管理
コスト管理も企業の効率的な運営を実現するために不可欠な要素です。
財務部門はコスト削減のための戦略を立案し、予算管理やコスト分析を行います。
具体的には各部門の予算を策定し、実績と比較することでコストの適正化を図ります。
またコスト削減のための改善策を提案し、実行することも部門の役割です。
財務戦略の実行とモニタリング
経営計画の目標を達成するためには、財務戦略を実行すると同時にモニタリングすることが重要です。
計画に基づいて資金調達や資金運用、投資計画、コスト管理などの各戦略を実行し、目標達成に向けた取り組みを行いますが、実行にあたっては各部門との連携が重要になります。
各部門の活動をサポートし、財務戦略の実行を円滑に進めるための調整を行います。
同時に財務戦略の実行状況を定期的にモニタリングして進捗状況を評価しますが、その際のポイントをまとめると以下のようになります。
①資金調達状況
資金調達計画が順調に進んでいるかの評価で、調達条件や利率変動、各種手数料などのコスト、リスクについても評価します。
②資金運用状況
資金の運用状況についても定期的に確認し、効率的な運用が行われているかを評価します。
その際、流動性の確保やリスク管理にも注意を払う必要があります。
活動資金に流動性が無いと必要な支払いに応じられないなどの弊害が出る可能性があるので、手元資金は現預金など流動性の高い資金元で確保しておくことが肝要です。
③投資計画の進捗
投資計画の進捗状況を確認し、収益性やリスクについて評価します。
事業活動に必要な不動産の確保などの計画は、上で見た手元資金の流動性の確保に影響が出ないよう注意しながら進める必要があるので、必要に応じて投資計画の見直しを行います。
④コスト管理
コスト管理状況を確認し、予算通りに進んでいるかを評価します。
必要に応じてコスト削減のための改善策を提案し、実行します。
⑤フィードバックと改善
モニタリングの結果を基に財務戦略の改善を行います。
目標達成に向けて必要な修正や改善策を講じることで財務戦略の効果を最大化します。
またフィードバックを通じ、各部門との連携を強化して組織全体のパフォーマンスを向上させます。
財務戦略の成功事例
ここで少し、財務戦略の成功例を挙げてみましょう。
Appleは皆さんもご存じの世界的に有名な企業ですが、革新的な製品を次々と市場に投入することで高い収益性を維持していますね。
財務戦略の観点からみるとAppleは高い利益率を維持するためにプレミアム価格設定を行い、製品の差別化やブランド価値を高め、顧客に対して高価格でも納得してもらう戦略を採用しています。
この基盤としてAppleは強固な財務基盤を確保し、大規模な投資や買収に対応できる体制を整えています。
また株主還元にも積極的に取り組んでいて、定期的な配当や自社株買いを行うことで、株主の信頼を得て、企業価値を高めています。
そして我が国の自動車大手トヨタ自動車は、グローバル展開を進める中で財務戦略を巧みに活用してきました。
安定した資金調達と効率的な資金運用を実現するために、トヨタは多様な資金調達手段を組み合わせて活用しています。
これにより、資金調達のリスクを分散し、調達コストを最適化しています。
そしてグローバルに展開する事業に合わせて各地域の市場動向や経済状況を考慮し、資金配分を最適化することで、リスクを抑えつつ収益を最大化しています。
原材料調達の効率化や生産工程の改善にも力を入れコスト管理の強化も図っています。
まとめ
この回では経営計画策定における財務の役割について見てきました。
財務は企業経営を継続していくための資金源をどう確保するかだけでなく、その運用やコスト管理までも含め資金に関すること全般を担当します。
中長期的に企業活動に支障が出ないように資金の動きを注視していく必要があり、その責任は極めて重いものになります。
財務を任せられる人材は経験はもちろん信頼性も重要になるので、経営者の腹心が担当することも多いと思われます。
安心して財務を任せられる人材をぜひ確保したいですね。