現状、ファクタリング業界は貸金業法のような強い法規制を受けていません。
そのため利用者にとって利便性の良いサービス提供ができる一方、質の良くない業者も参入しやすい状態となっていることに一定の注意が求められます。
利用者側としては、ファクタリングの性質を理解したうえで、できるだけ損をしない安全な取引を考えたいところです。
本章ではファクタリング取引を考える際に押さえるべきポイントをいくつか挙げて見ていきますので、ぜひ参考になさってください。
手数料と相場感
ファクタリングの手数料については、法律による規制がないため各事業者が自由に設定できます。
そのため業者側の言い値になってしまう危険があり、利用者側としてはある程度の相場を知っておく必要があります。
個別の取引事案によって手数料の額はかなり変わりますが、二社間取引の場合は債権価額の10%~30%程度、三社間取引では3%~9%程度に収まることが多いです。
この数値からかけ離れた手数料を提示された場合は警戒が必要です。
対応にかかる迅速性
ファクタリング業界は参入しやすい状態であるため、安全性や信頼性だけでなく迅速性や利便性についても業者ごとに対応の質は様々です。
昔気質の業者は土日が休みだったり、営業時間が短いなどで迅速な対応を受けられないこともあります。
特に書面でのやり取りや対面での面談が必要になる業者は迅速な資金調達が難しいので、急ぎの場合は避ける必要があります。
買取限度額
ファクタリングは債権の譲渡取引なので、債権の価額以上の資金調達が望めません。
小規模のファクタリング業者の場合、資金力の問題などから買取対象の債権価額が低めに設定されていることがあります。
売却予定の債権価額の買い取りが可能かどうか、相談する前にWEBサイトなどで確認しておきましょう。
利便性
中にはオンライン取引ができない業者もいるので、その場合は契約の際に書面を郵送する必要があるなど時間だけでなく手間を取られることになります。
近年はオンライン取引が普通になっていて、対面での面談を要せず、また書類のやりとりなども不要で全てWEB上で行うことが一般的になっています。
利用者側がスムーズにサービス提供を受けられる業者かどうか確認が必要です。
運営元企業の規模
貸金業法などの法規制がないファクタリングは参入意思さえあればサービス提供ができてしまいます。
資金体力がないのにあるように見せかけて参入することもできてしまうため、利用者側としては経営体力のない業者とはできるだけ取引を避けた方が無難です。
資金体力がない業者の場合、債権の買取金額が小さく目的の資金額を確保できない可能性がありますし、何かあった時に賠償金を支払えるだけの資金体力が無いと泣き寝入りとなってしまう可能性もあります。
ファクタリングは個人事業の形態でも参入できてしまうので、利用者側は取り引き相手となるファクタリング業者の規模や信用面をよくチェックしなければなりません。
保証人や担保を要求されないか
借り入れや融資の場合、資金を貸し付ける金融機関が返済リスクに備えるために担保や保証人を求めるのが普通です。
ファクタリング利用者側に知識が無いケースでは、ファクタリングでも保証人や担保を用意するのが普通だと思い込んでしまっている人もいるので注意が必要です。
ファクタリングは取引対象となる債権自体に金銭的価値を求めるもので、性質としては在庫の売却処分に似ています。
在庫を売る時に保証人や担保が不要であるのと同様に、ファクタリングも保証人や担保を用意する必要はありません。
しかし中には利用者の無知に付け込んで保証人や担保の用意を求める悪質なファクタリング業者がいることも報告されています。
例えば、相談当初は保証人や担保の話は出ないものの、手数料をもう少し下げてほしいとお願いしたところ、それなら保証人か担保が必要だと言われるケースもあるようです。
ファクタリング取り引きである以上、手数料の増減で保証人や担保が必要になることはありません。
保証人や担保の用意を求めるということは、それは貸金取引をしていると解釈されます。
その事業者が貸金業法の適用を受ける貸金事業者でない限りは貸金取引をすることはできません。
悪質な業者はそのようなルールを無視して取引に持ち込もうとすることがあるので、「ファクタリングには保証人や担保は不要」ということをぜひ覚えておいてください。
償還請求権にかかるリスクの有無
ファクタリングサービスは銀行も取り扱うことができますが、銀行が提供するファクタリングは利用者サイドにデメリットが多く、あまり利用されません。
例えば銀行は貸金業者として登録されているためリコース取引が可能です。
リコース取引とは、万が一売掛先が倒産するなどして売掛金の回収ができなくなった場合、債権を譲渡した会社がその責任を負う「償還請求権あり」の取引形態を言います。
銀行はリスク回避を重要視し利用者の利便性は二の次ですので、リコース取引とするのが普通です。
一般のファクタリング業者は貸金業者ではないのでノンリコース取引(償還請求権なし)のみが許されています。
ノンリコースの場合、債権譲渡企業は責任を持たずに済むので安心して債権譲渡に臨めます。
架空債権取引への誘導に注意する
架空債権取引とは、本来存在しない売掛債権があるかのように装ってファクタリング取引をすることです。
どうしても資金が必要で、本来は存在しない取引があるように請求書などを偽造してファクタリング業者を騙そうとする事件も実際にあり、これについては民事で賠償責任を追及されるだけでなく、重い刑事責任を追及されることになりますから絶対に考えないようにしてください。
一方で、悪質なファクタリング業者側から架空債権取引を持ちかけるケースもあるので、こちらにも注意を要します。
どういうことかというと、お金が欲しい利用者に水を向ける形で、「ウチとしては後で精算してもらえればいいので、売掛債権があるように請求書を偽造したらどうです?ウチはそれを買い取ったことにするので、後で精算してください」というように誘導するわけです。
これはつまるところ、お金を貸して後で返すという貸金取引に他なりません。
貸金取引ができるのは貸金業者だけで、一般のファクタリング業者がすると違法行為になります。
このような悪質なアドバイスをするような業者は真っ当な感覚を持っていないのが明らかですので、トラブルに巻き込まれる可能性が高いです。
仮に当初は問題なく進んだように見えても、後で色々と難癖を付け、相手が言うことを聞かないと書類を偽造した側に責任があると態度を180度変えることになるでしょう。
架空債権取引で警察に通報すると脅して言うことを聞かせようとするでしょうから、こうしたトラブルに一度巻き込まれると厄介です。
WEBサイトをチェック
相談する先、契約する先の運営元の企業に関しては事前にWEBサイトで素性をしっかり調べておきましょう。
質の良くない業者は相手に安心してもらおうとする意識が低いので、WEBサイトの作りが簡素なことが多いです。
一見して適当なWEBサイトの場合は相談自体を避けましょう。
まとめ
本章ではファクタリング取引を考える際に押さえるべきポイントや、相談する際に注意すべきポイントについて見てきました。
手数料負担などの金銭面、対応スピードなどの迅速性だけでなく、実際の相談で注意すべきポイントは複数あります。
ファクタリングを利用する際には業者の信頼性や安全面にも気を配るようにしてください。